ひととあやかしが共に暮らすことができる、最後の聖域。四国、高知の山奥にある隠れ里。茂伸(ものべの)――滋賀出身のあやかし、目玉しゃぶりのぺろは、忘れ去られて消え去る定めから自らを救い出すため、意を決してものべのへと移住してきます。『目玉しゃぶり』――誤解からつけられてしまったその名は性(しょう)となりぺろを縛って、苦しめます。「目玉を舐めたい、しゃぶりたい」――その性に抗うために、ぺろは「あめだま」を舐めることを習慣づけるようになり。その習慣は、いつしか飴作り・飴細工を生業とするまでの飴好きに、ぺろを成長――あるいは変化させました。ものべのの人やあやかしや半妖や、ひいては土地神たちにまで人気となったぺろの飴と、旅をしているあなたは偶然から出会います。飴づくりについて教えてもらううち、飴作り体験をさせてもらうこととなり。ぺろの工房でぺろと一緒に、あなたは飴づくりに挑戦することになります。手取り足取り、ぺろがいきいき指導してくれるその声と息遣い。ヒートテーブルに溶かした飴がそそがれシュワーーーっと沸きたつ音。飴を伸ばしあるいは剥がすコテのここちよい金属音。ぺろがころころ、味見で転がす飴の音。鼓膜だけでなく舌でも飴を味わううちに、あなたの歯には飴がくっついてしまいます。ぺろが優しく飴を剥がしてくれる歯磨きと、そこから連なる耳かき、そうして静かな添い寝。目玉しゃぶりのぺろが飴玉同様、あなたをやさしく練って伸ばしてころがしてくれるような甘さたっぷりな癒やしの時間を――どうぞ、そのお耳でごゆるりとお楽しみください。

イラストレーター : はすみ

シナリオ : 進行豹

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