ひととあやかしが共に暮らすことができる、最後の聖域。四国、高知の山奥にある隠れ里。茂伸(ものべの)――元の住処の人吉・球磨の市房山から新天地を求め茂伸に越してきた雪御嬢のゆきは、けれどもバス駅の日陰から、一歩も動けなくなってしまいます。茂伸の――四国の陽射しはゆきにとっては余りに強く、その中に足を踏み出したなら、きっと溶かされてしまうからです。行くも戻るもできなくなったゆきを助けてくれたのは、バスからおりてきた旅人の――あなた。お礼に汗だくの体を拭いて冷やしてもらったあなたは、ゆきと一緒に車を借りてドライブをして、ゆきが暮らせる場所を探して、見つけます。仮初の住処に定めた洞窟内で元気を取り戻したゆきは、ゆきに快適な気温に合わせ、すっかり冷えたあなたの体を乾布摩擦してあたためてくれます。ここちよいぬくもりと、穏やかで丁寧なみみかきと。こころの距離を縮めたあなたとゆきとの添い寝を彩る寝物語は、昔話と――これからのこと。ひんやり冷たく、けれどぬくもる雪の指先と静かな声とに導かれ……どうぞゆるりと、癒やされ、おやすみいただけますと幸いです。

イラストレーター : Cura

シナリオ : 進行豹