ひととあやかしが共に暮らすことができる、最後の聖域。四国、高知の山奥にある隠れ里。茂伸(ものべの)――かつて秋田で神と祀られ、けれど信仰対象の入れ換わりにより語られることとてなくなってしまった山鬼――三吉鬼のサキも、愛用の火縄銃だけを引っさげて、茂伸の山へと落ちてきました。人に愛され、人を愛し、けれども人に忘れ去られてしまった、神格たる強大な力を有する、山の、鬼。ひょんなことからその懐に潜り込む形となってしまったあなたは、体力のなさをサキに心配されてしまいます。鬼特有の朴訥な語り口の深くに覗く、サキの優しさ、あたたかさ。それを見出したあなたは、サキとのこころの交流を、ゆるやかに進めていくこととなります。疲れた体を、ほぐして、伸ばして。鹿肉入りのだまこ鍋で、ほっこりとお腹を満たして。少し不器用な耳かきのあとは、一緒にもぐるお布団の中で――サキはあなたを、ほんの少しだけ鍛えてくれます。山そのものを思わせるサキの大きな包容力に体もこころもまるごと委ねて――全てを任せる安心感で、どうぞ、ごゆるりと日常の疲れをお癒やしください。人を殺めず、人を喰らわず、人助けをして、その代償に酒を求めて――酒造りの手が減ることを嫌い、人間同士の戦争にまで鉄砲引っさげ介入したことさえもある、変わり種の鬼、サキは、もともとはただの山鬼――山の鬼でした。けれども人を助けるうちに、サキは人から『三吉様――サンキチさま』といつか呼ばれるようになり、やがて神社に祀られる神格とまでなりました。けれども長い時間がすぎて。どこかで誰かが、「鬼が祀られているのはおかしかろう」「本当は、人間の豪族の『三吉氏(ミヨシし)』が、この神社には祀られていたのだ」――と言い出したことから、サキの運命は一変します。都市化が進み、なかなか山をおりられなくなり――つまりは人との直接交流が途絶えた中では、信仰対象の入れ換わりは、じわじわ浸透してしまいます。やがて、自分を信じるものがいなくなった――つまりは助けを求めらる存在ではなくなったことを理解したサキは、潔く生まれ育った山を出て、旅の果、茂伸に安住の地を構えます。人波に揉まれ、ふらりと山へ迷い込んでしまったあなたと、人を助けたいと願うかつての、山の神。ふたりが出会ってしまうのならば、求めあい、支え合うのは、ごくごく自然なことでしょう。

イラストレーター : Cura

シナリオ : 進行豹